糖尿病網膜症の七不思議
大阪医大眼科教授 池田恒彦先生の講演を聞いてきました。
「糖尿病網膜症の七不思議」
当院近辺の患者さんは糖尿病のコントロールが良いのか、
進行した糖尿病網膜症をみる機会はめっきり減っていましたが、
今でも日本人中高年期の失明原因では第一位の病気です。
昔、手術してもレーザーしてもどんどん悪くなる人から、
悪そうなのにど真ん中の黄斑部はきれいで、いつまでも視力が良い人まで。
予後の決め手となる黄斑症には、なぜ個人差があるんだろうと思ったものです。
眼科医なら誰もがぼんやりと感じるそんな疑問を
きちんと科学的に突き止めていく姿勢がすごい!
糖尿病黄斑症では白斑というしみができ、
これが黄斑部にたまってしまうと視力がもどらなくなります。
中心窩(ど真ん中)の周りにたまったシミが、なぜかだんだん中心に引き寄せられ、
何で移動するのーと思ったことはしばしばありました。
このシミがどうして黄斑に溜まるのか、なんで白斑が円状に広がるのかなんて
ちゃんと考えたこともありませんでした。
幹細胞は陥凹した低酸素のところにあるという性質があり、
くぼんだ黄斑部には幹細胞があるのではあるのでないか。
幹細胞はヒアルロン酸を多く産生するため、
ヒアルロン酸の、水を保持しつつ脂質を引き込む性質のため、
黄斑部に硬性白斑が沈着しやすいのではないかとの事でした。
黄斑と幹細胞は、加齢黄斑変性症への世界初の幹細胞移植で有名ですが、
もともと幹細胞があるかもしれないなんて、
何だか夢のある話だと思いました。