ベトナムのひかり
NHKで濱田岳さん主演のドラマ「ベトナムのひかり」が放送されました。
長年ベトナムで医療活動をされている、眼科医の服部匡志先生がモデルです。
言葉や文化の違いに悩みながら、、ベトナムの眼科医療に新風を吹き込んでいく様子が描かれていました。
私は10年前に2年程、ベトナムの首都ハノイに滞在していました。
この時にハノイ国立眼科病院で活動していた服部先生とお会いした事があります。
ドラマでも出てきた内視鏡での硝子体手術も見学させて頂きましたが、
慣れたベトナム語でスタッフと会話しながら、
オペ室ではベトナム人医師と並列で手術を進めていました。
時間にルーズなのが一番の困り事だとおっしゃっていましたが、
とても自然に手術をこなす姿が印象的でした。
ベトナムはチャイナプラスワンとして、様々な海外企業が進出を始めた頃で、
首都ハノイにも次々とビルやマンションなどが立ち並び、活況に沸く頃でした。
都市部のお金持ちはレーシック手術も受けるような反面、
ベトナムの多くを占める貧しい農村部では、まだまだ医療の恩恵に預かれない人が沢山いました。
技術面だけでなく社会の構造的な問題で、 医療の格差はかなりあったようでした。
私の住むマンションのそばに盲の老人を見ることがありました。
手作りの箒を売るために、鈴をつけた杖を頼りにバイクが行きかう道を歩いていくのです。
見かけるたびに気になっていましたが、ある日思いきって声をかけ
小さな箒を1万ドン(当時は70円)で買いました。
社会保障の十分ではないベトナムでは、障害の身でも必死に働く姿が心に残っています。
私ときたら、眼科臨床とはすっかり離れていた頃だったため、
自分の無力を感じつつ、日本から持ってきた眼科雑誌にやっと手を伸ばす事しか出来ませんでした。
あれから10年。
私は服部先生程ではなくとも、
誰かのひかりになれればいいと思う日々です。